Twitterが通用しない?韓国SNS事情の基本知識
近年、韓国からの訪日観光客は右肩上がりに増加しています。それに伴い、多くの観光地や飲食店、サービス業者が韓国人向けの集客施策としてSNSマーケティングを強化し始めています。しかし、「Twitterでキャンペーンをしても韓国人から反応がない」「SNS広告を出しても反応率が低い」と感じたことはありませんか?
実はそれ、韓国のSNS文化と大きく関係しています。本記事では、韓国でTwitterがあまり使われていない理由と、代わりにどのSNSを使えば効果的に情報を届けられるのかを、訪日インバウンド戦略の視点から解説します。
韓国人観光客は増えているのに「SNS広告の反応がいまいち」
コロナ禍が明けてから、韓国からの訪日観光客が再び増加傾向にあります。特に週末の繁華街や人気観光地では、韓国語を話す観光客の姿が以前にも増して目立つようになりました。こうした状況に対応するため、地方自治体や観光協会、個人経営の飲食店・サービス業者でも、韓国人観光客向けのSNS施策に取り組む動きが加速しています。
しかし、実際に広告やキャンペーンを打ってみると、こうした声がよく聞かれます。
「SNS広告を出しているけど、韓国人からの反応がまったくない」
「Twitterでキャンペーンをしても、リツイートもいいねもつかない」
日本人向けにはある程度成果が出ていたはずのSNS施策が、韓国人観光客にはなぜかまったく響かない。この「ギャップ」の原因は一体何なのでしょうか?
日本で効果のあるTwitter施策が韓国では響かない理由
日本のSNSマーケティングにおいて、Twitter(現在のX)は非常に重要なプラットフォームです。リアルタイム性に優れ、短文で手軽に投稿できることから、キャンペーンやイベント告知に多く活用されてきました。特に若年層や情報感度の高い層に届きやすいという特性があります。
しかし、この「Twitter前提の施策」がそのまま韓国市場には通用しません。
なぜなら、韓国ではTwitterがあまり使われていないからです。
データによると、韓国におけるTwitterのアクティブユーザー数は全体SNSユーザーのわずか数%に過ぎず、主にK-POPファンや特定のコミュニティに限られています。つまり、Twitterでどんなに素晴らしいキャンペーンを実施しても、そもそも韓国人の目に触れていない可能性が高いのです。
これが、SNS施策の効果が上がらない大きな理由のひとつです。
まず知っておきたい韓国SNS文化の前提
韓国のSNS文化は、日本と似ているようで大きく異なります。以下は、その代表的なポイントです。
SNSでの情報収集=InstagramとYouTubeが主流
韓国では、観光情報・飲食店情報などを調べる際に、InstagramやYouTubeを活用するのが一般的です。ハッシュタグ検索によって「#東京グルメ」「#大阪旅行」などの投稿を探し、写真や動画を見て行き先を決める人が非常に多くいます。
カカオトークが「インフラ」レベルで使われている
韓国でLINEのような存在なのが**KakaoTalk(カカオトーク)**です。ほとんどの韓国人が日常的に利用しており、店舗やブランドが開設できる「Kakaoチャンネル」は、顧客との接点としても注目されています。
実名制の文化と匿名性への不信感
韓国では過去にSNS上での誹謗中傷事件が多発し、匿名投稿に対して慎重な風潮があります。そのため、実名制に近いSNSを信頼し、匿名性の高いTwitterは距離を置かれやすい傾向があります。
このように、韓国では**「どのSNSを使うか」そのものが違う**という前提を理解することが、インバウンド戦略において極めて重要です。
なぜ韓国ではTwitterが使われていないのか?
日本では一般的なTwitter(X)を使ったマーケティングですが、韓国市場ではなかなか効果を発揮しないのが現実です。
ここでは、韓国でTwitterが広まらなかった背景を、データや文化面から詳しく紐解いていきます。
利用者数の圧倒的な差:Twitterの韓国国内シェアの現状
韓国におけるTwitterの利用率は、日本と比較して極めて低い水準にとどまっています。
たとえば、2024年時点のデータによると、韓国国内でTwitterを定期的に利用しているのは、インターネットユーザー全体のわずか3~5%程度に過ぎません。
一方で、InstagramやYouTubeはそれぞれ70%以上の高い利用率を誇っており、情報収集・発信の主役はすでにこちらに移っています。

このように、母数そのものが圧倒的に小さいため、韓国市場でTwitterベースの集客や広告を行っても、なかなか成果に結びつかないのが実情です。
韓国ユーザーの行動パターンと情報収集の傾向
韓国のSNSユーザーは、情報を得る方法に独自のスタイルを持っています。
特に注目すべきなのは、ビジュアル重視・検索重視という特徴です。
Instagramで「#(ハッシュタグ)」検索する文化
観光地、飲食店、ショッピング情報などを調べる際、韓国人ユーザーはInstagramのハッシュタグ検索を積極的に活用します。
例:「#도쿄맛집(東京グルメ)」「#일본여행(日本旅行)」など
YouTubeを「動画検索エンジン」として利用
日本ではYouTube=エンタメのイメージが強いですが、韓国ではYouTubeで情報検索するのが一般的になっています。
たとえば「大阪 観光スポット」と検索し、旅行Vlogやレビュー動画を参考にするケースが多いです。
このような行動パターンを持つため、短文中心かつリアルタイム配信型のTwitterは、韓国人にとって情報収集に向かないツールと見なされています。
過去の社会的事件・匿名性への不信など文化的背景も
韓国においてTwitterが普及しなかった理由は、単なる利便性や機能の問題だけではありません。
文化的背景や社会的事件も大きく影響しています。
SNS上での誹謗中傷問題
韓国では、SNSを通じた誹謗中傷が社会問題化してきました。
特に芸能人や著名人に対する悪質な書き込みが問題視され、社会全体で「匿名による発信」への警戒感が高まりました。
実名制に対する信頼
こうした背景から、韓国では実名制に近いSNS(KakaoTalkやNAVER系列のサービスなど)が好まれる傾向が強まっています。
「誰が発信しているか分からない」Twitterのような匿名プラットフォームは、信用度が低く、主流になりにくかったのです。
このように、韓国では利用者数・行動パターン・文化的背景すべての面で、Twitterが主流SNSにならなかった理由が存在します。
次章では、**では実際に韓国で今使われているSNSは何か?**をさらに深掘りしていきます。
韓国で主流のSNSは?各プラットフォームの特徴と強み
日本ではTwitterやInstagram、LINEなどが主流SNSとして使われていますが、韓国ではさらに異なる利用トレンドが存在します。
ここでは、韓国市場で特に影響力を持っているSNSと、それぞれの特徴・強みを解説します。
Instagram:若年層を中心に人気。ビジュアル訴求に強い
韓国ではInstagram(インスタグラム)が特に20〜30代の若年層を中心に絶大な人気を誇っています。
レストラン、カフェ、観光地、美容、ファッションなど、**「写真や動画で映えるコンテンツ」**を探すための主要ツールとなっています。
特徴的なのは、ハッシュタグ検索文化が非常に発達している点です。
韓国人ユーザーは、Google検索ではなくInstagramの検索窓に直接「#도쿄맛집(東京グルメ)」や「#오사카여행(大阪旅行)」といったキーワードを打ち込み、リアルな体験情報を探します。
ハッシュタグ設定は必須
高品質な写真・短尺動画が重要
韓国語対応の投稿がより効果的
YouTube:検索エンジンとしての機能。長尺コンテンツが有効
韓国ではYouTubeも情報収集において欠かせないツールです。
特に**「何かを調べる=YouTubeで検索する」**という行動パターンが定着しており、旅行先の紹介動画、レビューVlog、グルメ体験動画などが人気です。
日本での利用イメージよりも「検索エンジン的」な役割が強く、単なるエンタメ視聴だけでなく、本格的な情報探索メディアとして活用されています。
2〜10分程度のしっかり作り込まれた動画が好まれる
サムネイルとタイトルで直感的に内容が伝わることが重要
韓国語字幕を入れることで視聴完了率がアップ
KakaoTalk:LINEのような存在。トークチャンネル活用事例
KakaoTalk(カカオトーク)は、韓国人のほぼ全員がインストールしている国民的チャットアプリです。
LINEと同様に、個人間の連絡ツールでありながら、ビジネス向け機能も充実しています。
特に注目したいのが「Kakaoチャンネル」機能です。
店舗や観光地が公式アカウントを開設し、友だち登録したユーザーにクーポンやイベント情報を配信できる仕組みで、韓国人ユーザーとのエンゲージメント向上に効果を発揮します。
Kakaoチャンネルで直接ユーザーとつながれる
クーポン配布やポイント制度との連携がしやすい
すべて韓国語運用が基本
小紅書(RED)、Naverブログなどの中国・韓国系メディアも選択肢
訪日観光情報の発信において、小紅書(RED)やNAVERブログといった別系統のメディアも無視できません。
**小紅書(RED)**は中国発祥ですが、韓国の若い女性層にも利用が広がっており、コスメ・グルメ・観光情報の発信地として注目されています。
NAVERブログは韓国最大の検索エンジン「NAVER」直結のブログサービスで、特に深掘り型の情報提供に向いています。
小紅書では「口コミ風」「体験レポート風」の投稿が効果的
NAVERブログはSEOを意識した長文記事が有効
この章で、韓国におけるSNS事情の「今」がつかめたと思います。
続いて、「では、これらのSNSをどう使って訪日韓国人にアプローチするか?」を具体的に掘り下げていきましょう!
訪日韓国人に刺さるSNS活用術
韓国人観光客に向けた情報発信を成功させるためには、単にSNSを使うだけでは不十分です。
重要なのは、**「現地ユーザーにリーチできる設計」と、「訪日前から訪日中までのカスタマージャーニーを意識すること」**です。
ここでは、具体的なSNS活用のポイントを紹介します。
「現地SNSで発信し、日本で受け入れる」クロスボーダー戦略
訪日韓国人を集客するためには、韓国国内で使われているSNSを通じて、日本の情報を発信することが必要です。
いくら日本国内のプラットフォーム上でPRしても、ターゲットとなる韓国人ユーザーに届かなければ意味がありません。
韓国のInstagramユーザー向けに、韓国語で投稿を配信する
YouTubeで韓国語字幕付きの観光地紹介Vlogをアップする
Kakaoチャンネルでクーポン情報を配信し、来店促進につなげる
韓国にいる時点で情報をキャッチしてもらい、「次の日本旅行ではここに行こう」と思わせる流れを作ることが理想です。
ハッシュタグとインフルエンサーの使い分け
韓国人向けSNS施策では、ハッシュタグ活用とインフルエンサー起用が大きな武器になります。
ハッシュタグの活用
韓国人ユーザーはハッシュタグで情報を検索する文化が根付いています。
そのため、投稿には必ず韓国語のハッシュタグを付与しましょう。
例:
- #도쿄맛집(東京グルメ)
- #오사카여행(大阪旅行)
- #일본카페(日本カフェ)
日本語や英語タグだけでは、韓国人には届きにくいので注意が必要です。
インフルエンサーの活用
影響力のある韓国人インフルエンサーとタイアップすることで、短期間で多くのターゲットに認知拡大が可能になります。
特に「訪日旅行に興味がある層」や「グルメ・観光ジャンルに強いクリエイター」を選ぶと、訴求効果が高まります。
カスタマージャーニーを意識したSNS導線設計
SNSで情報を届けるだけではなく、その後の行動までスムーズにつなげる設計が非常に重要です。
韓国人観光客のカスタマージャーニーを意識し、各フェーズに応じたタッチポイントを作りましょう。
【カスタマージャーニー例】
- 興味喚起(Instagramの投稿やリール動画)
- 情報収集(YouTubeの詳細レビュー動画)
- 意思決定(Kakaoチャンネルでクーポン確認)
- 行動・訪問(店舗や観光地へ来訪)
【導線設計のポイント】
- SNS投稿に必ず公式サイトや予約ページへのリンクを設置する
- 韓国語対応のWebサイトを用意して、ストレスなく予約や情報確認ができるようにする
- 来日前に「現地で使える特典(例:クーポン、限定サービス)」を提示し、来訪のモチベーションを高める
このパートで、「どこで」「誰に」「どう届けるか」の基本設計がイメージできたはずです。
続いて、実際に成果を上げた事例紹介に進めてもOKです!
事例紹介:TwitterではなくInstagramで成果を出したプロモーション例
ここまで、韓国人観光客向けSNS施策においてTwitterが適さない理由と、代わりに活用すべきプラットフォームを解説してきました。
実際に、InstagramやKakaoチャンネルを活用することで高い成果を上げた事例が数多く出ています。
ここでは、特に参考になる2つのケースをご紹介します。
某観光地のケース:InstagramとKakaoチャンネルの連携施策
ある地方観光地では、韓国人観光客の誘致を目的に、従来の日本向けTwitterキャンペーンから方針を大きく転換しました。
Instagram投稿×Kakaoチャンネル運用という「クロスボーダー戦略」を本格的に取り入れたのです。
【施策内容】
- 韓国語対応のInstagramアカウントを新設
- 韓国人インフルエンサーに現地体験コンテンツ(リール動画)を依頼
- Kakaoチャンネルを開設し、観光情報・限定クーポンを韓国語で配信
- ハッシュタグ「#일본여행(日本旅行)」や「#도쿄근교(東京近郊)」を活用
【成果】
- Instagram経由での韓国からのアクセスが前年度比280%増
- Kakaoチャンネル登録者数が施策開始3ヶ月で5,000人突破
- クーポン提示による観光施設利用率が前年比1.8倍に
この事例では、「現地で使われているSNSで発信する」ことの重要性を改めて証明する結果となりました。
某ドラッグストア:韓国語ショート動画で再来店率UP
東京・新宿エリアに店舗を構えるあるドラッグストアでは、韓国人観光客向けに**韓国語ショート動画(Instagramリール)**を制作しました。
【施策内容】
- 店内の人気商品を韓国語で紹介するショート動画を投稿
- 「今月のおすすめ」「免税手続きの方法」なども動画で案内
- 韓国人インフルエンサーによる「来店レポート動画」を拡散
- 投稿ハッシュタグ:「#일본쇼핑(日本ショッピング)」「#도쿄드럭스토어(東京ドラッグストア)」
【成果】
- Instagram経由の店舗来店者数が施策前の1.5倍に増加
- 購入後に「SNSを見て来た」と回答した韓国人観光客が約20%
- リピーター獲得率(再来店率)が前年比約30%アップ
特に、**「韓国語で、視覚的にわかりやすく紹介する」**という点が、購買意欲の促進に直結した成功要因となりました。
このように、韓国人ユーザーが「普段使っているSNS」で、かつ「母国語で」「リアルな体験」を発信することが、訪日促進・来店促進に直結していることがわかります。
次の章では、これらを踏まえてまとめと今後のインバウンド戦略への提言を行います!
まとめ:韓国人集客は「現地文化に合わせたSNS設計」がカギ
ここまで見てきたように、韓国人観光客向けに集客を強化したいのであれば、日本国内向けのSNS施策をそのまま当てはめても効果は出にくいことが分かりました。
成功するためのカギは、**「韓国人の文化・行動習慣に合わせたSNS設計」**をすることにあります。
日本と同じ施策では届かない
日本国内では主流となっているTwitter(X)や日本語中心の投稿は、韓国市場ではほぼ無力です。
韓国では、Instagram・YouTube・KakaoTalkといった別のSNSが情報収集・発信の主役となっており、さらにビジュアル重視・実名制文化といった特性が強く影響しています。
つまり、日本で効果があった手法をそのまま流用するだけでは、韓国人観光客には届かないのです。
インバウンド集客を本気で考えるなら、対象国に合わせた戦略カスタマイズが不可欠です。
「どこで何を発信するか」の見直しが集客の第一歩
まず最初に見直すべきなのは、**「どこで何を発信するか」**という基本設計です。
どこで:韓国国内で使われているSNS(Instagram/YouTube/KakaoTalk)
誰に:訪日予定の韓国人観光客(特に20〜30代が中心)
何を:リアルで信頼できる日本体験の情報(観光・グルメ・買い物など)
どうやって:韓国語で、わかりやすくビジュアルを重視して発信
この4つの設計を明確にすることが、訪日韓国人集客成功への第一歩です。
最後に:今後のインバウンド戦略にSNS多言語運用は必須
韓国だけでなく、台湾、タイ、香港、ベトナムなど、アジアからの訪日観光客はますます多様化しています。
今後は**「多言語・多文化対応のSNS運用」**がインバウンド集客のスタンダードになるでしょう。
SNS運用の段階で、
- 対象国ごとのプラットフォームを選ぶ
- 言語別に投稿を最適化する
- 文化背景に合わせたコンテンツ作成をする
これらを組み込めるかどうかが、集客成果を大きく左右します。
特に韓国市場においては、**「韓国語運用」「現地人気SNS活用」「リアルな体験訴求」**の三拍子が重要です。
いま一度、自社・自施設のSNS戦略を見直してみましょう。
「現地目線」で設計されたSNS施策は、きっと韓国人観光客に届き、大きな集客力へとつながるはずです。